部門別選択
サンプラザでは、地域密着の活動として地元の高校と催しものなどにいっしょに取り組む活動をしていますが、その中で塚ノ原店では毎年、高知商業高校さまと共同で商品を開発しています。今回のガパオライスの原案は、高校生から挙がったものです。海外旅行になかなか行けず、海外のメニューを販売する小売店も増えてきていることもあり、挑戦してみようと考えました。
難しかった点は、まず味付けです。本場の味付けを再現することはできるのですが、あまり辛過ぎると万人受けしません。調味料の配分を変えることで、ガパオらしさを残しつつ、皆さんに喜んで食べていただける味を目指して何回も試行錯誤を繰り返しました。基本的にしょうゆやみりん、砂糖を使いながら、ガパオらしさを出すためにナンプラーとバジルのソースを使用し、日本人が好きな甘辛い、オリジナリティのある味付けにしています。
また、商品にはできる限り高知県の食材や特産品を多く使うことを心掛けました。ご飯には県産のコシヒカリを100%使用し、南国市で栽培された有機グァバ茶の粉末をご飯と混ぜ合わせて炊き上げています。 お茶の風味が加わることで風味が豊かになり、ふっくらとした食感になります。
さらに高知県らしい食材であるカツオの生利節をショウガと一緒に煮込み、炊いたご飯と混ぜ合わせています。
商品は1回リニューアルをしており、具材のひき肉を豚から県産の四万十鶏のムネ肉に変更したり、中身を季節の食材に合わせて変更したりと製造工程も含めて見直しました。また、メインの具材に添えるおかずも、豆腐と鶏肉で作ったハンバーグから同じタイ料理であるカオマンガイに使われる蒸し鶏に変更しました。蒸し鶏にも四万十鶏を使用しています。
ガパオライスは、若い世代の方に好かれているメニューだと思っていますし、今後も商品を通じて若年層の取り込みを狙っていきたいと思います。私たち小売業は変化適応業です。時代の流れに合った、お客さまに満足してもらえる商品、お客さまが幸せになる商品を今後も開発し、地元の生産者さまに貢献できるような商品をつくっていきたいと思います。
TOSA-GAPAO
株式会社サンプラザ
商品部 トレーナー
大川 貴史
魚を使用したスーパーの米飯というと、多くの方は「鮭弁当」や「さば弁当」などを思い出すでしょう。そして、実際に売れているのもこの2商品がほとんどだと思います。また、弁当・惣菜商品に関しても、洋風メニューや肉使用メニューが多く、“和”・“魚”というキーワードでのヒット商品は余りないように思えます。
これまで私は色々な商品にチャレンジしてきましたが、今回はあえて、主力の肉惣菜ではなく、鮭でも鯖でも秋刀魚でもない魚を使用した魚が主役の米飯の開発にチャレンジしました。新たな魚原料米飯を開発し、定番化することで、魚のおいしさや価値を再認識していただくと共に、差別化商品として打ち出すこともできると考えました。
魚にも色々な魚種がありますが、多くの日本人に昔から愛され、高級感やご馳走感、主役感を感じていただける魚種と言えば“鯛”です。ハレの日などにも使用される魚種で、他の魚よりも長生きすることや美しいピンク色からも縁起物として重宝されてきました。その鯛を使用した米飯といえば、“鯛めし”です。鯛めしはさらに縁起物として、ご馳走としても価値が高い商品です。蓋を開けた時に、鯛の香ばしさが感じられる商品をイメージしました。
しかし、鯛は原料としては決して安くはありません。そこで、鯛のカマ付の御頭の使用を考えました。鯛の御頭には身がまだたくさん詰まっていますが、加工の手間から御頭のみでは一般的には余り流通されません。実は鯛の御頭のみでも意外と高単価で取引をされていますが、下処理を自社で行うことにより、お買い求めいただきやすい価格を実現しています。
初期段階の鯛めしでは、インパクトを訴求したかったために、鯛の御頭を丸々1つ焼いて入れていましたが、販売する店舗様から「見た目が怖い」「お子様が怖がる」などのご指摘をいただいてしまいました。しかし、味は決して悪くないので、見た目を改善して再度チャレンジすることにしました。
辿り着いたのが「鯛の旨味あふれる“鯛めし”」です。
当商品では、鯛の外側をあえて見せずに、御頭半身の内側(身側)をあえて見せることで、鯛身がたくさん詰まっていることの訴求にもつながり、漁師めし感やお得感も訴求できるようになりました。また、ご飯の上に大きな鯛の御頭半身がドーンとのっていることで、ボリューム感が出せ、家族でシェアできるイメージにもつながりました。ご飯に鯛の御頭をひっくり返してのせただけですが、商品価値は一気に上がったといえます。
原料の国産養殖真鯛の御頭は、流水で臭みをしっかりとります。塩は若干強めに振ります。その後、スチコンのコンビモードで約30分かけて、香ばしく、かつふっくらと焼き上げます。
ご飯は「ひとめぼれ」と「はえぬき」のブレンド米を使用。その米に真鯛だしと鯛身、調味液を入れて炊き上げました。ご飯の量は500gを入れ、総重量は約750gにもなり、3人前ほどあるため、家族連れ等にも人気の商品となっています。
今後も、他のスーパーマーケットが作らないような商品を開発し、お客様に驚きと感動を提供していきたいです。特に魚離れが進む中で、魚のおいしさを伝えられるような商品の提供を目指していきます。
「鯛の旨味あふれる“鯛めし”」
利恵産業株式会社
商品開発部 部長
古川 隆裕
山形優味株式会社は、懐石料理店「すず音」「銀のすず」を山形県内で展開する他、弁当・惣菜の製造販売を実施しています。既製品・化学調味料を使わず、日本料理の基本である素材の味を活かした料理を提供しています。また、地場物や旬の食材を取り入れることを心がけています。
「山形まるごと弁当」の開発は、地域や取引先業者様等が疲弊し暗い雰囲気となる中、何か話題性のあるもので元気にできないかという発想から始まりました。地元山形県の旬の食材を使用した“ご当地弁当”で山形県を元気にしようと考えました。
山形県は海・山・里の恵みが豊富な地域です。山形県を庄内地域、最上地域、置賜地域、村山地域に分け、その地域の特産物を弁当メニューに組み込みました。庄内地域からは、米「つや姫」や「サクラマス」、「おばこサワラ」、最上川産いくらなど。最上地域からは、里芋など。置賜地域からは、「米沢牛」やわらび粉など。村山地域からは、米「雪若丸」、旬のフルーツなど。また、県内各地から旬の野菜を調達しています。なお、味付けに使用する味醂と砂糖以外の原料や調味料も山形県産にこだわりました。
献立は、当社懐石料理で人気のメニューを中心に、山形県産の食材や調味料と当社料理人の高い技術により約20品目を詰め込みました。「つや姫」は品評会で入選した米を使用し、冷めてもおいしいため、あえて白飯で味わっていただきます。「雪若丸」は山形名物の芋煮と一緒に炊き込みました。県魚でもある「サクラマス」は、地元の味噌を数種類ブレンドした味噌で漬け込み西京焼きに、旬魚「おばこサワラ」は柚庵焼きにしました。どちらも炭火で焼いています。最上川を遡上する前の鮭からとった最上川産いくらは、昆布だし醤油に漬けました。また、そのだしを効かせた地鶏卵使用のだし巻き玉子には葛粉を加え、冷めてもジューシーに仕上げてあります。平田牧場三元豚のいんとう巻きは、三元豚の味噌漬けに旬の野菜を巻きました。献立の中で唯一洋食の米沢牛ハンバーグを入れ、和食のハンバーグを提供します。デザートには旬の種なし巨峰とシャインマスカットを採用した他、地鶏の卵を使用した舌触りなめらかなプリンを卵の殻に入れて作りました。また、山形県はわらび生産量日本一であり、そのわらび粉から作ったわらび餅は、ほどよい弾力と口の中で溶けるように仕上げてあります。
一番苦労したのが洋食の米沢牛ハンバーグです。調和を乱さないように醤油ベースのソースで仕上げました。また、冷めた時に硬くならないように、米沢牛肉と玉ねぎ、パン粉の量の調整をすると共に、ソースを作る際に使用した野菜をハンバーグ種の中にも入れ、ソースとの一体感を出しました。
どの献立も職人の技によりかなりの手間と時間をかけており、製造には限度があるため、数量限定で販売しています。しかし、発売以来反響は大きく、お客様からは「ほぼ全て山形県産で、この品目数をこの価格で食べられるのは嬉しい!」などの良いコメントを多く頂いています。
前向きになれる環境が少ない中、お食事を通して「笑顔」と「小さな幸せ」を思い出し、「地元生産者とのつながり」を是非感じていただけたら嬉しく思います。
山形まるごと弁当
山形優味株式会社
高橋 知邑
2018年12月に㈱アークス、㈱バローホールディングス、㈱リテールパートナーズの3社により「新日本スーパーマーケット同盟」が結成されて以来、同盟限定商品の販売や生鮮食品の共同調達・拡販、デリカ商品の共同開発、食品製造業への共同出資を通じた製販一体の取組みを実施してきました。デリカ商品の共同開発では、「美味いが正義」というコンセプトに基づいて、ナショナルチェーンの強力なバイイングにも対抗できるよう、共同販売による原価低減とおいしい商品の開発に取り組んできました。
共同開発では、売上上位カテゴリーを中心に商品開発を実施していますが、山口県・九州エリアでは甘めの味付け、名古屋を中心としたエリアでは甘辛い味付け、北海道では出汁感が強い味付けなど、展開エリアによって味付けが大きく異なります。特に主力単品は各社の差別化商品となっており、味付けを一律にするわけにはいきません。一方、売上上位カテゴリーの中でも、味の地域差が少ない商品もあることに気づきました。その一つが「カニクリームコロッケ」でした。
共同開発商品としては、2020年10月に「芳醇カニクリームコロッケ」を発売し大きな反響がありました。今回最優秀賞を受賞した「ビスク風芳醇カニクリームコロッケ」は、「芳醇カニクリームコロッケ」の進化バージョンとして開発しました。コンセプトを「ちょっとリッチなカニクリームコロッケを全ての食卓へ」とし、支持の高い「芳醇カニクリームコロッケ」に、流行りのビスクの要素を加え、誰もが納得して「おいしくて安い!」と言っていただける、リッチでお値打ちのカニクリームコロッケを開発しました。
カニクリームコロッケには明確な定義があり、カニは原材料に対し8%以上を使用しなければいけません。また、乳脂肪含有率も1.4%以上でないとクリームコロッケの用語を表示できません。意外に“カニ入りのクリームコロッケ”のNB品を販売している企業も多くあり、原価面からカニクリームコロッケとして値頃で販売するのは、意外に難しいといえます。
当商品では、北海道産発酵バターを加えたベシャメルソースに国産紅ずわいがにの身を8%以上加え、しっかりとカニの風味を感じていただけます。また、冷めてもトロ~リ感が出るように、ベシャメルソースのミルク感にこだわり、ミキシングの速さや加熱時間にもこだわり試行錯誤しました。
さらに、洋食屋のようなリッチ感と納得の旨さを出すために、ロブスターヘッド等から作ったアメリカンソースをベシャメルソースに加えてあります。ただし、当商品はカニクリームコロッケです。アメリカンソースを加え過ぎると、濃厚さや旨味は強くなりますが、カニの風味はなくなってしまいます。濃厚さと旨味を増しつつ、カニの風味を活かす配合に苦労しました。また、ベシャメルソースを口に入れた瞬間は、現行の「芳醇カニクリームコロッケ」に比べて多少重めにして重厚(ボディ)感を出す一方、口溶けを良くすることで後味がもったりしないというバランスの良さを目指しました。
衣には、剣立ちと油切れが良く、高いサク味、1個80gとボリューム感のある見た目を実現できるパン粉を採用しています。
そして、これだけこだわった内容のコロッケを1個100円以下で販売することにも注力しました。全ての原料が値上がりする中、原料一つ一つを吟味することで実現できました。
新日本スーパーマーケット同盟では、3ヵ月に1回のペースで部会を開き、主力カテゴリー商品を中心に年に4品ほど商品化しています。現在、ヒレカツなどの揚物類や天津飯をはじめとした米飯商品などの商品化にも取り組んでいます。
展開エリアは違えど、おいしいものをお値打ちで提供したいという気持ちは同じです。これからも「美味いが正義」を合言葉に取り組んでいきます。
ビスク風芳醇カニクリームコロッケ
中部フーズ株式会社
(株式会社バローホールディングス)
デリカ事業部商品開発部 次長
柘植 昭一郎
株式会社ラルズ(株式会社アークス)
商品統括部 ロジスティクスグループ
デリカセンター長 兼生鮮食品グループ
第4商品部GM
前田 直樹
株式会社丸久
(株式会社リテールパートナーズ)
惣菜部長
阿武 克也
今回の最優秀賞の受賞で、3回目・3年連続の受賞となりました。まさかまた受賞できるとは思っていなかったため、受賞の連絡を受けたときには、思わず涙してしまいました。
今回受賞した「さくたろう甘くて柔らかいプリンのような卵焼き」は、「高級寿司店で〆に出てくるカステラ玉子焼きをプリンのように作って、カラメルソースを掛けたら面白いだろうなぁ…」という発想から開発しました。当店の立ち上げ当初からある人気メニューで、たくさんの方々にご支持をいただいている商品です。
当商品は、デザートのプリンではなく、あくまで玉子焼きです。一口食べると「あれっ、これはプリンなのでは?」と感じるのですが、2口、3口と食べるうちに「違う、これは玉子焼きだ!」と感じて頂けるはずです。一口食べた時には甘くプリンのような味わい。二口目からは出汁の旨味と出汁の豊かな香りが感じられ、止まらなくなります。
使用している卵は、新潟県五泉市のキムラファームの卵を使用しています。人気のブランドで、私の高校時代の恩師が教師を辞めて育てており、キムラファームの卵の中でも一番適したものをアドバイスしてくれます。
卵に鰹出汁と焼きあご出汁、牛乳、生クリーム、砂糖、藻塩等を合わせ、何度も濾してから型に流し込みます。大変な作業はここからです。普通、プリンは蒸して作りますが、この玉子焼きはコンベクションオーブンを使用し、低温で約4時間焼き上げていきます。低温で長時間加熱することで、水分をしっかりと保持したまま、すが入らずきれいに焼き上がります。一晩寝かせることでねっとりとした食感になります。最後にバーナーで表面に焼き色をつけて完成です。
別添のカラメルソースは、地元新潟県の人気の出汁醬油「越のむらさき」をベースに作るのですが、最後に昆布出汁を加えることで、甘いながらも、旨味と奥行きのある風味豊かなカラメルソースに仕上がります。
開発で最も苦労した点は、焼成時間です。何十回も作り直し、“約4時間”にたどり着きました。約4時間なのは、分量通りに配合しても、毎回同じには焼き上がらず、その都度時間の調整が必要だからです。水分量も多く温度と時間にはかなり気を使っています。
面白いエピソードとしては、当商品をプリンだと勘違いした保健所の方が、立ち入り検査に来ました。プリンは菓子なので菓子製造許可が必要ですが、使用している砂糖の量やレシピ、調理工程、完成品をご覧いただき、しっかりと玉子焼きであることを理解していただけました。
今後は、この玉子焼きの知名度のアップと、旨味のさらなる相乗効果のために改良していきたいです。
さくたろう甘くて柔らかいプリンのような玉子焼き
有限会社北弁
店長
廣岡 信太郎
ダイキョープラザでは、長く食べ続けても健康であり続けるように、手作り・無添加・天然出汁を使用した商品の提供に努めています。また、お客様に「見て、変化でワクワク、食べて美味しい」感動を与えられる商品作りに取り組んでいます。
青果売場でも販売する新品種である無花果「とよみつひめ」は、皮ごと食べられ、甘みが強く癖が少ない新品種で、福岡県産果物の新たな顔になることを期待されている果物です。当商品はその「とよみつひめ」をふんだんに使用したフルーツサラダです。
「とよみつひめ」は新品種であり、まだ食べたことのない方も多く、このおいしさを知っていただきたく、どのような提供の仕方が良いか試行錯誤を重ねました。無花果は香りの高い食材やチーズなどの濃厚な食材との相性が良いため、クリームチーズや、刻み柿、ミニトマト、ベビーリーフ、無塩ミックスナッツなどとフルーツサラダにすることで、単品素材としてもサラダとしても楽しめると考えました。農産物はもちろん全て福岡県産です。
今回は「とよみつひめ」以外の食材は、「とよみつひめ」のおいしさをより引き立てるための食材であり、これらの食材を一つにまとめて料理に仕上げるのがトリュフソースです。一見、トリュフソースが無花果の良さを消してしまいそうですが、それは違います。甘い無花果の果肉とクリームチーズの濃厚なコクをトリュフソースの芳醇さが結び付け、旨味に変えてくれます。そして、後味には無花果の甘みと心地よい香りが残ります。また、「とよみつひめの」断面は大変美しく高級感があり、断面を見せない手はありません。美しさを表現できる容器を探し、「とよみつひめ」のスライスやミニトマトのスライスを容器に貼り付けることで、スーパーでありながらデパ地下クオリティーの商品に仕上げました。
一目で分かる通り、手間のかかる商品で、オペレーションには大変苦労しました。パート従業員も含め様々な盛り付け方法を試し、道具も使用し手早く安定して盛り付けることができるようになりました。
オペレーション上大量生産はできない商品であり、1日10パック限定での提供となりますが、予約のお客様もいるほどです。また当商品がきっかけとなり、果物の「とよみつひめ」のファンになっていただけたお客様もおり、当商品が貢献できていると感じ大変嬉しく思っています。
現在、空前のクラフトブームが起きていると感じています。“クラフト”つまり“手作り”が注目を浴びており、お客様が手作りの価値を認めてくださっているといえます。我々はローカルスーパーとして、地場のもの、旬のものを使用した惣菜を手作りで提案してきました。ローカルスーパーには大手スーパーチェーンにはできない“手作り”があり、“手作り×地元×旬”は、これからを生き抜いていくための差別化の武器だと考えています。
今後も、さらに“手作り”を磨き、お客様の欲する、ワクワクさせるような商品を提供していきたいです。
福岡県産ブランド無花果『とよみつひめ』とトリュフソースのサラダ
株式会社ダイキョープラザ
代表取締役社長
杉 慎一郎
当店は静岡市内で約40年青果店を営んでおり、その隣に約20年前から小さな惣菜店「惣菜屋あお木」と「デリバリー惣菜 ランチオン」を営んでいます。当店では、八百屋が作るお弁当・お惣菜店として、鮮度のよくおいしい野菜や珍しい野菜、家庭で試していただけるような商品なども提供し、地元のお客様に“野菜のおいしいお惣菜店”として支持をいただいています。また、地場の八百屋が作る惣菜店として、地域の皆さんのために、野菜の旬に対応したフットワークの軽い惣菜店を目指しています。
今回、最優秀賞を受賞した「1富士2鷹3折戸なすヴェリーヌ」は、弁当・惣菜の売上の落ちる夏場に、幻のなすと言われる「折戸なす」の冷たい洋風惣菜で、売上アップを図ると共に、折戸なすの素晴らしさを是非知っていただきたいと考え、“一富士二鷹三茄子”をギリシャ料理のムサカ風メニューで表現しました。また、コロナ禍に明るい話題を食卓に提供したいという思いから、フォーチュンデリカとしての想いを込めました。
当商品は、その姿が一番美しいと言われる三保の松原から見た富士山を模しています。山頂は、残雪や雲をイメージし、ホワイトソースにクリームチーズとナチュラルチーズを合わせたチーズソースです。
二層目は、親鶏と豚ひき肉、ホールトマト、赤ワイン等を使用したミートソースです。鷹の肉は使えませんので、親鶏を使用しました。親鶏は若鶏に比べ旨みが強く、煮込むことで柔らかくなります。また、牛豚合挽きではなく、鶏豚合挽きとしたのは、原価面と環境に配慮しました。当店では、環境に配慮した商品づくりにも取り組んでいます。牛肉を育てるのに使用される水や飼料、排出CO2等の比較からも鶏豚合挽きを採用しました。また、ミートソースには隠し味としてチャツネを加え、深い味わいを出しました。
そして三層目で折戸なすを楽しんで頂けます。折戸なすは歴史のある野菜で、文献によると、江戸時代には徳川家康に献上されていた野菜のようです。そして諸説ありますが、“一富士二鷹三茄子”の茄子は、当時三保半島で栽培されていた「折戸なす」であるとも言われています。
折戸なすは、現在のなすと比べ弾力があり、少し灰汁もあるのですが、熱を加えると強い甘みが出るのが特長です。
苦労した点は折戸なすの調理法です。トロトロにしようと低温で長い時間熱を加えると、色味が鮮やかにはなりません。甘みを最大限に引き出し、綺麗な色味のまま焼き茄子にする温度と時間の調整に苦労しました。焼いた折戸なすは、白醤油や鰹だし等で焼きびたしにし、ゼラチンで固めました。ゼラチンで固めることで、容器を逆さまにしても層が崩れることはありません。
また、盛り付けにも細心の注意を払いました。容器にチーズソース、ミートソース、折戸なすの焼きびたしの順に重ねていくのですが、各層を水平にしなければ、美しい富士山ではなくなり、商品価値は一気に下がってしまいます。実は水平に層を重ねていくのは大変難しいです。
当店には、八百屋ならではの皆さんにおいしさを知ってほしい、味わって欲しい野菜がまだまだあります。様々な調理法やメニューで、八百屋の作る惣菜を提供していきたいです。
1富士2鷹3折戸なすヴェリーヌ
青木青果
商品開発担当
青木 哲人
「日南鶏と大葉入りつみれと8種具材の鶏だしうどん」は、豊かな大葉の風味をできる限りそのままに、からだに染みわたるようなやさしい味わいの商品です。
私はこれまで、様々な料理店で和食の調理師として経験を積んできました。和食の調理師として常に心掛けていることは、“食べ疲れしない、やさしい味わいを提供する”ということです。できるだけ余計なものを使用せず、素材の風味を活かしたおいしさを提供することで、毎日食べても飽きず、また食べたくなるような商品を提供するように心掛けています。
この大葉との出会いは、当社スーパーマーケットのグロサリー売場で販売する“大葉ソース”の取扱いがきっかけです。こちらがとてもおいしい商品だったことから、この大葉ソースを製造している大分県の植木農園さんで生産する大葉に着目しました。
植木農園さんは、約50年前から大葉の大規模栽培を開始し、第38回の農林水産祭で内閣総理大臣賞を受賞したこともある生産者です。大葉そのものの風味と品質が大変高いことに加え、摘み取る際に葉には触れず、茎の部分のみを持って摘み取っていきます。そうすることで、葉の裏側にある香り成分が詰まった腺鱗(せんりん)を潰さずに摘み取ることができます。
この大葉そのままを1枚に加え、2枚分の刻み大葉をうどんにトッピングするなど、1パックに計6枚の大葉を使用しました。この大葉は通常でも風味が高いのですが、レンジアップした時の香りの立ち方が他の大葉とは格段に違うことに感銘を受け、このおいしさを最大限お届けできる商品を開発したいと考えました。そこで、一緒に食べた時に大葉の風味をより感じやすいうどんと組み合わせました。色合いの面でも、白いうどんに鮮やかな緑色が映えることで、より美しくなると考えました。
具材のつみれも自社で製造しています。宮崎県産日南鶏のむね肉を使用し、当商品に合わせて食感などを調整したこだわりのつみれです。このつみれ2個に対し、大葉1枚分を贅沢に混ぜ込みました。つみれを食べた時にも大葉の風味を楽しんでいただけます。その他の具材には、白菜や大根、人参、玉ねぎ、素揚げかぼちゃ、茗荷、さつま揚げをトッピングして、ボリューム感を出し、具沢山に仕上げました。
うどんは北海道産小麦100%のうどんを使用しています。
うどんに使用するスープは、鰹や昆布、焼あご等を使用した当社オリジナル商品の出汁をベースに、鶏ガラだしや淡口醬油などを合わせて作りました。健康志向の高まりを受け、なるべく塩分を抑えるためにスープをやさしい味わいに仕上げています。そのため、極力余計な調味料を入れていませんが、もの足りなさを感じることのないよう、だし感と塩味の調整に一番苦労しました。
成城石井の自家製商品は、誰が製造してもお客様に同じおいしさを提供しなくてはいけません。そのため、チームワークを意識して業務に取り組んでいます。特に、若い世代の従業員とのコミュニケーションを向上させることで、仕事の視野が広がり、知識の深掘り、味や調理法の伝承をスムーズに行えると考えています。今後は後進の教育にも力を入れていきたいと思います。
日南鶏と大葉入りつみれと8種具材の鶏だしうどん
株式会社成城石井
製造本部 製造部 和食グループ 主任
深澤 啓介
毎年、土用の丑の鰻商戦は盛況ですが、米飯の鰻商品売場には目新しいものがなく、ご飯の上に鰻蒲焼をのせたスタイルが定番であり、変化がありません。美味しさの上では問題ありませんが、新たな提案をすることで、鰻本来の味を知っていただき、もっと手軽に鰻を楽しんで頂けるのではないかと考えました。
そこで、「お重としての鰻重から、料理としての鰻重へ!」をコンセプトとし、定番の肉厚で柔らかい“蒲焼”に加え、鰻本来の旨味を味わえる“白焼き”をセットにした商品をカジュアルなスタイルで提案しました。蒲焼×白焼き、カジュアルなスタイルで提案することにより、お重一辺倒の売場に変化をもたらし、新たな客層の創出にもつながることを期待しました。
結果として、2021年土用の丑商戦では、約1,000パック以上を販売し、鰻米飯の売上増に貢献できました。
鰻蒲焼と白焼きは価格面からそれぞれ中国産ですが、産地が異なります。実際に何種類も試食し、適した産地・メーカーの商品を採用しました。蒲焼は肉厚で芳醇な味わいのものを採用し、焼きは4度焼き、タレは5度付けです。また、タレは通常よりもあっさりとして粘度の低いものを指定し、鰻の味をより活かしたタレとなっています。
白焼きの選定は大変難しかったです。取扱いメーカーも多くはなく、加工種類も少ないからです。特に気を使ったのは、焼成後の皮目の柔らかさと鰻の脂の臭いです。蒲焼の場合、タレ自体のマスキング効果に加え、タレと脂が焦げた際の香りによるマスキング効果があります。一方、白焼きは原料そのものに臭いが少ないことが重要です。今回採用した白焼き原料は臭みがなく、皮もやわらかく脂も上品です。
今回、白焼きを最大限においしく食べていただくために、レモンをのせてより爽やかな味わいで提供すると共に、わさびと醬油で食べて頂けるように工夫しました。山葵醬油をつけて食べることで、白焼きの脂の旨味と甘みがより楽しめます。
ご飯は棒状に盛り、鰻のタレではなく海老出汁入りのタレを隠し味に掛け、刻み海苔と大葉、胡麻を散らし、カットした鰻をのせることで、飽きの来ない仕上がりとなっています。
当商品は容器にご飯を棒状に盛り付け大葉などをトッピングし、カットされた鰻をスチコンで温めトッピングする仕組みとなっており、店舗オペレーションの負担軽減も考慮した商品です。カットされた鰻をトッピングするだけなので、売場でのチャンスロスも少なく、売上にも貢献できました。何より、鰻重ばかりの売場を、売上を伴って変えられたことが嬉しいです。今後は、これを第一歩として、さらなる改善をしていきたいです。
当社では、単一原料からのメニュー化に取り組んでいます。鶏肉商材が良い例で、鶏むね肉の鶏天やその皮から作った鶏皮せんべい、サラダチキンなどがあります。鶏天は単品で年間3億円越えの商品に成長しています。鶏むね肉原料商品は今後、10億円商品に育てていきたいです。また、その他の単一原料でも、計画的に効率よく売れる商品を開発していきたいです。
ふっくら身厚の鰻蒲焼と白焼きの合盛重
彩裕フーズ株式会社
惣菜事業部
商品部 米飯 温惣菜
バイヤー 兼 商品開発バイヤー
北原 崇史
黄金ハンバーグの開発のきっかけは、山盛りの白飯の上に大きなハンバーグがのっている動画を見たことでした。大変存在感があり、溢れる肉汁が神々しくもあり、こんなハンバーグを作りたいと思いました。
色々なハンバーグを試作しましたが、試食していただいた方からは「これはハンバーグじゃなく“つくね”だよ!」「これは中華料理じゃない?」という厳しい意見もいただきました。試作を重ねるうちに「ハンバーグってなんだろう?」と考えるようになり、「ハンバーグの枠を超えたハンバーグを作りたい。新しいハンバーグを作りたい」と思うようになりました。そして、私の商品作りの基本である“味の相乗効果”や“映え”も盛り込んだ、ハンバーグでもつくねでもない新しいハンバーグ「黄金バーグ」を作ることを決めました。とはいえ、明確な黄金バーグ像があったわけではありません。何十回も試作を繰り返すうちに、徐々に私の作りたい黄金バーグ像が見えてきました。
ハンバーグやつくねは、冷めるとジューシーさが無くなり、固くなりパサつき、おいしさが半減してしまいます。黄金バーグでは、これらの欠点を克服し、ハンバーグとつくねの良いとこどりをしました。
また、黄金バーグの“黄金”は、黄金に輝いたイメージの他、種の配合の黄金比、旨味の相乗効果の最大化等の意味も込めました。 しかし、「旨味・肉汁・食べ応え・冷めても柔らかいまま・大きくてもペロッと食べられる」を全て満たすのは大変難しかったです。 まず、原材料ですが、粗合挽き肉、鶏の軟骨、豚バラ極薄切り肉をメインに使用し、昆布出汁も加え、旨味とジューシー、心地よい食感を実現しました。
一番難しかったのは、焼き方です。通常より水分量の多い種のため、普通に焼いたのでは、焼いている最中に肉汁が流れ出てしまいます。そこで深さのある器に入れてオーブンで焼くことで、冷ましたときに肉汁がハンバーグ内部に留まり、冷めても固くならず、大変ジューシーに仕上がりました。
ソースにもこだわりました。油分の多く濃いソースではなく、煮切って旨味を凝縮させた純米酒ソースを掛けることで、黄金バーグ自体の旨味をより引き立てます。また、ソースに透明感があるため、黄金バーグに上品さがプラスされました。さらに卵黄ガーリック醤油ソースを別添し、途中からは味変も可能です。
黄金バーグの付け合わせにはたくさんの焼き野菜を添えました。ボイルやフライではなく、生野菜を焼くことで野菜の風味をしっかりと味わえ、結構な量の肉を食べても、罪悪感が薄れます。また、彩りも良くなり、映えも実現できました。
ご飯の上には、ゴマやとろろ昆布などをちらし、旨味と食感の相乗効果も引き出しました。
約300gある大きな黄金バーグですが、旨味の相乗効果で、気付けば無理なく完食していただけるはずです。
さくたろう元祖黄金ハンバーグ~旨み凝縮編~ 卵黄ガーリックソース
有限会社北弁
店長
廣岡 信太郎
東武ストア惣菜・ベーカリー部では、味には一切妥協せず、特に食品スーパーNo.1を目指して、商品作りに取り組んでいます。
今回受賞した「具材たっぷり大きなおにぎり」の開発のきっかけは、当社既存商品の店内手づくり「俵おにぎり」でした。当社駅直結小型店舗「フレッシュ&クイック 曳舟店」において、通勤・通学客を中心に大変支持が高く、1日約150個を販売していました。しかし、2020年初め頃から新型コロナウイルスの感染が拡大し、駅の利用客をはじめ、スーパーでの惣菜・ベーカリーの需要は格段に減ってしまいました。その中でもこの「俵おにぎり」の売上は余り落ちず、根強い支持がありました。
緊急事態宣言も発出されてしまいましたが、我々も「仕方ない」と手をこまねいているわけには行きません。何とかして、現状の駅利用のお客様の単価を上げたり、購入数を増やすことを模索しました。そのためには、“よりおいしく”“より価値ある”商品を開発する必要がありました。そこで、「俵おにぎり」からより売れる商品として進化させたのが店内手作りの「具材たっぷり大きなおにぎり」です。
「具材たっぷり大きなおにぎり」は全店で導入しており、現在では9アイテムで展開中です。俵おにぎりのごはんが100gであったのに対し、「具材たっぷり大きなおにぎり」は160gと60%以上も増量しました。中具の比率についても8%から12%に増やしました。
天むすの開発に先立ち、SMやCVS各社の調査を実施したところ、天むすおにぎりを提供しているSMやCVSは少なく、差別化商品としてチャンスがあると考えました。また、天ぷらを使用したおにぎりは高い支持がありましたが、同商品ではそれ以上の価値を出す必要がありました。
当社惣菜商品には「季節のよくばり海老天重」という商品があり、ブラックタイガーの海老天を2本使用しており、大変支持の高い商品があります。この価値を「具材たっぷり大きなおにぎり」にも移植し、ブラックタイガーの海老天を具材としました。ブラックタイガーの海老天が入ったおにぎりは中々ありませんし、存在感も十分です。また、海老天にかけるタレは天重と同様の甘目のあっさりとしたタレを使用しています。
米には、「はえぬき」と「あきたこまち」のブレンド米を使用しており、冷めても粘りと旨味を感じられる米です。また、炊き上がりには「瀬戸の焼き塩」を混ぜ込みます。
同商品には海苔ではなく、おぼろ昆布を使用しています。旨みが高いことに加え、海老天と一緒に食べた時の相性も大変良く、存在感もあります。
おにぎりの握り方ですが、型を使用せずに量ったご飯と海老天をラップで優しく握ります。型を使用しないことで、よりふっくら仕上がり、食べた時に口の中でほどけるように握っています。また、ラップも手作り感を増幅してくれます。
曳舟店では俵おにぎりとの併売ですが、カニバリはほとんどなく、「具材たっぷり大きなおにぎり」の売上がプラスオンしています。また、全店でもインストアおにぎりは昨年比200%と、コロナ禍での来店動機商品となっています。
具材たっぷり大きなおにぎり(天むす)
株式会社東武ストア
商品本部
惣菜・ベーカリー部
米飯チーフバイヤー
高橋 亨太
2020年、2021年、そして2022年と3年連続で最優秀賞を頂き、連絡をいただいた時は信じられませんでした。2021年受賞後は、新聞をはじめ、ラジオやテレビ番組の取材、私自身も番組に出演するなど、違う世界を体験でき良い経験となりました。また、2021年最優秀賞受賞の「しゃきしゃきごぼう天むすび」は大ヒット商品となり、月替わりの商品から定番商品売上1位にもなり、毎月売上点数が上位にランクインしています。改めて「お弁当・お惣菜大賞」最優秀賞のすごさを実感しました。
今回開発した「プチッともち麦の高菜ベーコンむすび」は、もち麦を使用した健康系のおむすびです。麦や玄米などを使用した健康系のおむすびは、購入されるお客様のほとんどが女性です。ですが、管理栄養士の資格を持つ私としては、是非、男性のお客様にも食べていただき、「美味しかったから、また買いに来たよ!」と言っていただくことを長年イメージしてきました。これまでも、男性のお客様に食べていただくために何十種類ものおむすびを開発してきましたが、思うような結果は残せませんでした。
今回、食べ応えがあり食物繊維豊富な健康系のもち麦に、野菜としての高菜漬け炒めやたんぱく源としてのベーコンをたくさん加えました。高菜漬けは、長崎県産のものを取り寄せて使用しています。また、高菜漬けは乳酸発酵しているため、生の高菜より食物繊維やカルシウム、カリウム、ビタミン類が多く、旨味もあります。この高菜漬けをごま油で炒め、無添加の出汁や醬油、みりん、ごまで味付けをします。ベーコンは、油通したものを加えます。
お米は広島県世羅町産の「特別栽培米こしひかり」、もち麦は広島県安芸高田市産「キラリモチ」、塩は広島県呉市蒲刈町産の「海人の藻塩」を使用しています。どれもこだわりの原料ですが、お米ともち麦は特にこだわりました。お米は減農薬や減化学肥料で育てられ、環境にも優しい特別栽培米に変更しました。またもち麦は、時間が経っても変色しづらく、食味の良いものを採用しています。
こだわりはもち麦とうるち米の配合比です。もち麦25%:うるち米75%の配合としました。細かく配合を変更し試してみましたが、もち麦が25%を超えると食感が悪くなり、食べづらくなってしまいます。また、食べやすく炊く水加減にも調整が必要でした。
ご飯ともち麦に具材を混ぜてむすぶことで、ごま油の良い香りが食欲をそそります。また、ご飯ともち麦がごま油でコーティングされ、水分が逃げずにほどよい食感を持続してくれます。
販売結果は大変良好でした。期間限定商品として販売したのですが、男性のお客様の購入が増えました。お米+もち麦の健康系ベースに、漬物(野菜)やベーコン(肉)を通常より多めに加えたことで、見た目のボリューム感と野菜も摂りながらお肉の満足感も得られる分かりやすい設計が良かったのだと感じています。
今後の商品開発としては、当社の一推し商品である「美人玄米(びじんげんまい)」を使用した商品を開発していきたいです。「美人玄米」は、玄米・黒米・大豆のブレンド米で、炊き上がりの色が美しく、女性にも男性にも食べていただけるおむすびを作りたいです。
プチッともち麦の高菜ベーコンむすび
株式会社オクモト
膳七事業部 管理栄養士
村上 有規子
マルトの商品開発では、他部門との連携を強化し、各カテゴリーのプロであるバイヤーの協力を得て進めています。さらに、仕入れ面では「仕入横串」の合言葉のもと、プロジェクトチーム「生鮮デリ開発チーム」を発足し、仕入れの一本化を図り、より良い原料をより安く調達できるように心掛けています。今回受賞した「山葵をつけて食べる・本鮪尽くし」は、このプロジェクトから生まれた商品です。
寿司部門では、以前から本鮪を主力の鮪として使用していましたが、冷凍鮪の取り扱いでした。しかし、より美味しい本鮪を食べていただきたいという思いから、生本鮪に変更することにしました。まずは、盛合せの1貫として生本鮪を使用したところ、お客様からの「おいしくなった」「特に鮪のにぎりがおいしくなった」「本鮪だけ食べたい」という声が多くありました。
また、コロナ禍で外出や外食の自粛を強いられる中、お客様の「おいしいものを食べたい」というニーズにお応えすることも使命と感じていました。
鮪は、季節に合わせて「伊根まぐろ」や「喜鮪」、「隠岐まぐろ」などの一番脂のりの良い80~120kgのサイズを厳選。鮪は水揚げ後1、2分で活〆され、1昼夜氷水にて冷却後各市場に出荷されます。水揚げ後の処理・出荷スピードが速いため、高鮮度の状態でお客様に提供できます。その後、いわき市場に丸のまま入荷され、仲卸から皮付き四半身の状態で店舗に午前中に納品されます。
店舗では、多くのパートさんが身卸からサクの切り出し、ネタ切りまでを行えるのも当社の強みです。
にぎり寿司では、生本鮪全ての部位を一度に味わえるように大トロ・中トロ・赤身・たたきを2貫ずつ入れています。ネタはシャリ重量の80%以上になるように大きめに切り出しており、鮪の味わいを十分に堪能できるようにしました。また、たたきでは、中落ちや切り落とし、筋に付いた身などを手作業で取り出し、包丁で叩いており、植物油脂などは一切入れていません。
酢飯の米は、毎年一番適しているものを採用し、自社惣菜センターから酢飯を出荷し、店舗でシャリ玉にして使用しています。酢は当社が伝統的に使用してきた酢に梅酢を配合し、お客様から好評価をいただいています。また、シャリ玉にする際は、真ん中に空気が入るように特殊な設定をしており、口に入れた時にほどけるように設定しています。
当商品では脂のりが良い生本鮪を使用しているため、にぎり寿司に山葵を付けたのでは山葵の良さが打ち消されてしまいます。あえてにぎり寿司には山葵を使用せず、お客様が食べる際に付けていただき、山葵の風味と鮪との相性も楽しんでいただく設計としました。山葵は小袋となりますが、本山葵の含有率が高い当社オリジナルのものを使用しており、1パックに対し小袋4パックを添付しています。
売れ行きは好調で、1日1店舗約30パックを販売し、店舗によっては部門売上昨年比で120%以上となっています。
今回、生本鮪尽くしで鮪寿司の集大成が出来ましたので、今後は他のネタでの集大成商品の開発を目指します。
山葵をつけて食べる・本鮪尽くし
株式会社マルト
商品本部 営業サポート課
寿司担当 トレーナー 係長
阿部 雅敏
「寿司職人が作る なにわ宝ちらし」は、当社が提供する大阪寿司(押し寿司)のネタを使用した美しい盛り付けが特徴のちらし寿司です。
当社の商品では、おかずと一緒に盛り込んだ二段重弁当「なにわ宝ちらしの彩り弁当」が人気となっており、お客様から「ちらし寿司だけの商品が食べたい」という多くの意見をもとに、ちらし寿司をスピンアウトして開発しました。
目指したのは「宝箱のようなきれいなちらし寿司」です。当商品はちらし寿司のみの商品ということもあり、より美しく、より魅力的な商品に仕上げました。盛り付けた際の彩りと味のバランスを考えた大阪らしい10種の厳選した具材を特製木箱に敷き詰めました。
酢飯には、精米直後の伊賀米「キヌヒカリ」の特選米をと硬質米を合せたブレンド米を使用し、ネタの旨味を引き立てるほんのり甘目の関西風の寿司酢を合わせています。酢飯に刻み海苔を敷き、車エビ、煮穴子、酢〆の小鯛、子持ち昆布、帆立貝柱煮、いくら醬油漬け、しいたけ旨煮、錦糸卵、酢れんこん、絹さやを散らしていきます。これらは全て時間が経っても美味しく食べていただけるように加工、下味をつけています。
中でも車海老は、生きているうちに下処理し、甘みと旨味を感じられるような温度で茹で上げます。穴子は関西国際空港沖の泉州産穴子をこだわって使用しており、昔ながらの製法で冷めてもしっとり、ふんわりと口の中でほぐれるように炊き上げています。
具材の味付けは基本的に鰹節と昆布の出汁をベースにした薄味で、素材の味を活かした味付けを心掛けています。
テイクアウト、デリバリーの商品なので、生のネタはありませんが、当社の料理人の知識と経験、伝統の技術が活かされた逸品です。販売面では、ECサイトからの注文が多く、週末を中心に一般家庭のお客様からの注文を多く頂けるようになりました。
その結果、1日平均で40食、お祝いなどが集中する時期には1日100食以上の注文を頂いております。ご注文を頂いたお客様には「見栄えが美しいから注文した」、「人にさしあげたい」、「少し豪華のランチ会に」という方が多くおり、商品コンセプトが間違っていないことを確信しています。
私どもの商品づくりの考え方は「お客様が求めるものを作る」です。
「こんな商品があったらいいなぁ」という考えからは、奇をてらう商品になりがちで多くのターゲットを端から減らしてしまいます。お客様に買って頂けるプライスゾーンを探求し、価格決定してからコスト等の配分を行い、「おかず品数」「味のバランス」「品数や重量」「主菜と副菜の比率」など、「利用目的」などの「TPOS」を考え、お客様に必要とされる商品の開発を進めています。
また、当社では商品開発の一環として、相愛大学の管理栄養士を目指す学生との協同開発商品をここ数年実施しており、2022年春は健康をテーマに新商品を発売予定です。
これからも「お客様に喜んで頂ける商品」を追求しながら商品開発を実施していきます。
寿司職人が作る なにわ宝ちらし
株式会社徳
営業企画
蘆田 裕哉
ズバサンとは、“ズバ抜けておいしいサンドウィッチ”の略称です。
お客様に「これまでのサンドイッチとは比較にならないほどおいしい」と言っていただけるようなサンドウィッチを目指し命名しました。また、専門店に負けない美味しさや見映えを提供するため、素材や作り方にもこだわり、手間を惜しまずに製造しています。
ズバサンの開発に先立ち、専門店に負けない美味しさを追求するため、都内の人気サンドウィッチ専門店を十数軒リサーチしたところ、ある共通点に気づきました。まずは、見た目の美しさにとにかくこだわっていること。切断面が美しいのはもちろんですが、美しいだけではなく、ボリューム感もあり、シズル感や食べたくなる魅力を強く感じました。そして、味付けに関しては、ソースでサンドウィッチの味を決めるのではなく、パンやサンドされている具材の味を楽しむ商品が多くありました。そして、どの商品も意外に食べづらいです。それでも大変人気なのは、見映えがお客様の心を掴んでいるということだと分析しました。
当初の設計では、味や食べやすさに重心を置いて商品設計をしていましたが、分析結果を参考に、素材のおいしさと見映えの両立を目指しました。さらに、おいしさや見た目の美しさだけではなく、地産地消を推進する地域連携「いわき愛プロジェクト」の考え方を組み込み、健康や地元愛、地産地消の実現も目指しました。
専門店同様、見た目の美しさや食感、素材自体のおいしさにこだわりました。食パンは国産小麦粉100%(福島県産小麦50%・北海道小麦50%)を使用した当社PBを使用。もちもち食感でほんのり甘く、小麦の風味を感じられ、生食パンとしても楽しむことができるこだわり商品です。レタスは肉厚で歯応えがしっかりとしている地元生産者の「磐梯フリルレタス」、トマトも地元福島県産を使用し、アボカドは適度に熟した生を使用しています。海老は海水養殖のボイルバナメイエビの大きいサイズを採用し、色味が鮮やかなことに加え旨みが強く、海老本来の味と食感があるものを採用しました。
コンセプトに“健康”を組み込んでおり、野菜をたっぷりと使用し、当商品で1日に必要な野菜の1/3が摂れる設計としました。
味付けですが、具材のみずみずしさや食感、甘さ、旨さを味わっていただけるよう、シンプルにマヨネーズとタルタルソースのみとしました。
また、海老には有機オリーブオイルとブラックペッパーで香りづけをしてあります。オリーブオイルは、有機のものを使用することで、風味とおいしさが格段に向上します。
苦労した点は、食材探しとサンドイッチの具材のバランスです。各方面にご協力いただき、できるだけ地元産でおいしい食材を調達することに苦労しました。また、見た目の美しさやボリューム感を出すことに加え、サンドウィッチとして食べた時の食感やおいしさが具材の重ね方によって異なるため、数十パターンを試作し、ようやく当商品の重ね方にたどり着きました。
製造では、丁寧に製造していることもありますが、少々時間がかかっています。各店舗でおいしく美しいズバサンを提供できるように、オペレーション体制を確立していきたいです。
今後の開発商品としては、ズバサン効果でサンドウィッチにも注目が集まっているので、スタンダードなサンドウィッチの磨き込みを実施していく予定です。
ズバサン海老アボカド
株式会社マルト
デリカ部
IB部 課長
見城 周平
今ではコンビニ等での販売で、多くの方に「バスクチーズケーキ」という名称が知られるようになりました。しかし、世に出回っている「バスクチーズケーキ」と言われるものは、専門店で販売しているそれとは大きな隔たりがあると感じていました。私はパティシエとして約20年間菓子作りに携わってきました。もちろん、バスクチーズケーキがこれだけ有名になる前から知っており、いくつもの専門店商品をはじめとしたバスクチーズケーキを食べてきました。その中でも、“本物”と思える専門店のバスクチーズケーキは3,000円以上と手が出しづらく、購入店舗も限られているのが現状です。
今回、「本物のバスクチーズケーキを手が届く価格で提供したい」と考え、「極 バスクチーズケーキ」の開発にチャレンジしました。
バスクチーズケーキの原料は、クリームチーズ、生クリーム、砂糖、卵黄と基本原料は大変シンプルです。しかし、シンプルであるが故に、加工や乳化、焼成過程などの手の掛け方次第で、仕上がる商品の味や食感、品質は大きく変わってしまいます。銘店の味、本物の味を再現するため、0.1g単位でのレシピ調整、1度・1分単位での焼成温度・時間調整、スチームコンベクションでの湿度や風当たり調整など、妥協せずに繰り返し、試作は80回以上にも上りました。
特に苦労した点はバスクチーズケーキの特徴である“焦げ付き”を表現する焼成工程です。焦げ付き部分と上生地が分離しないように、生地の配合や焼成方法の微調整はかなり慎重に行いました。「極 バスクチーズケーキ」の完成には1年以上をかけ、ようやく納得のいく商品に仕上げました。また、自信のある商品に仕上がっただけに、贈答用での購入シーンも考慮し、化粧箱にもこだわりました。配送中に形が崩れないように、商品がぴったりと納まる化粧箱を特注し、高級感のある黒箱と毛筆でのロゴを採用しました。
価格帯は1,000円(税別)としました。多くのお客様にバスクチーズケーキの素晴らしさを知っていただきたいことに加え、価格以上の価値があることを実感して頂き、当商品を目的買いしていただくことを想定した価格設定となっています。また、累計325万本(2021年11月末時点)を販売する当社人気商品「しっとり濃厚ニューヨークチーズケーキ」や「濃厚焼きチーズケーキ」の価格帯約400円とも差別化できる価格となっています。
テスト販売では、試食なしで1日に70個販売する店舗もあり、関西エリアにおいても3日間で300個を完売するなど、新しいスイーツカテゴリーの核商品への期待が持てます。
現在、あえて催事や祝日などでの販売としており、商品の“格”も大事に育てていく方針です。
今後は、当商品の派生商品の開発やシリーズ商品のリニューアルを成功させたいです。
極 バスクチーズケーキ
利恵産業株式会社
製造部 菓子ピザグループ 係長
商品開発部 係長
佐藤 竜也
近年、“スイーツ男子”など、甘いものを好む男性が増えています。コンビニスイーツなども男性に人気であり、「実は甘いものが大好き」という男性はかなり多いと思います。しかし、父の日の贈り物としては、ご馳走やお酒などがまだ多いようです。母の日にはケーキやチョコレートの提案が多いのに、父に日には少ないのが不思議でした。私はレストラン等で約20年間洋菓子パティシエをしており、アメ細工をはじめ、チョコレートやウエディングケーキなども作っていました。その経験を活かした洋菓子で、世のお父様に「やっぱし、父の日はスイーツがいいなぁ」と思っていただくには…と考えました。また、父の日の6月に旬を迎えるフレッシュフルーツといえばアメリカンチェリーです。このアメリカンチェリーを使用した洋菓子を使用し、見栄えが良く、奥様やお子様までもが、お父様にプレゼントしたくなるような商品を考えました。
フランスの伝統的な菓子に、チョコレートとダークチェリー、チェリーの酒(キルシュ)を使用した菓子があります。フレッシュなアメリカンチェリーを使用し、この「フォレノワール」をベースにした菓子を作ることを決めました。
5月の母の日に苺のパフェを提案し大変好評で、お客様からは「見た目がかわいい」という声も多かったことから、父の日にも見映えのするパフェでの提案としました。
パフェの内容は大きく分けて6層構成です。上からフレッシュアメリカンチェリー、自家製チョコレートホイップ、チョコスコーン、フレッシュアメリカンチェリー、カスタードクリーム、ゼリーです。
まず、フレッシュアメリカンチェリーで旬を味わっていただきます。次に濃厚かつ香りの良いチョコレートホイップを楽しみ、チョコレートスコーンと一緒にカリッと食感でサプライズ。そして、フレッシュアメリカンチェリーでお口直しをしていただき、再び濃厚カスタードクリームを楽しんでいただきます。最後にさっぱりとゼリーで〆ます。ゼリーは2段構成になっており、上段がレモンゼリー、下段がクランベリーゼリーのグラデーションになっています。これは、酸っぱいレモンゼリーで口をさっぱり、ほんのり甘いクランベリーゼリーで後味と残り香を楽しんで頂く設計です。また、全体的に甘さを控えめに作ってあるのと、お子様もお父様と一緒に食べる可能性があるので、酒は不使用としました。
母の日のパフェも同様ですが、当社でのパフェづくりは初となるため、製造オペレーションや店舗への配送など、ほぼ初めてのことが多く大変苦労しました。まず、グラス型容器へのゼリーは前日までに配置し、その上の各層を従業員が綺麗に均一に組み上げられるようにするのに苦労しました。また、当商品は既存の番重と高さが合わず、専用段ボール箱を特注し店舗に配送しました。
今後は、当社従業員の技術レベルをさらに向上させ、高いレベルでの大量生産を可能にしていきたいです。商品としては、少し高めの価格帯の商品作りにチャレンジしていきたいです。
お父さんに食べてもらいたいチョコパフェ
彩裕フーズ株式会社
製造部デザート製造
マネージャー
鍋島 千明
2020年はコロナ禍真只中で、世間も百貨店の売場も活気があるとは言えない状況でした。そのような中、1年に1度の大イベントであるクリスマスだけでも、コロナ禍の暗さを一時忘れて、家族だんらん、笑顔で楽しんで欲しい一心で開発しました。
当商品は一目で手間が掛かっているのが分かっていただける商品です。会社的には「やりすぎでは?」と言われるくらい(いや、言われています)の手間が掛かっています。実際に大量に作ることはできませんし、前日からの仕込み等も大変です。しかし後日、ご購入いただいたお客様から「家族で楽しんで食べられてとても良かった」というコメントをいただき、本当に開発して良かったと思いました。
「和食の寿司をクリスマスパーティの主役にして欲しい」をテーマとし、「一口で食べられる飾り寿司×手まり寿司×ディップ寿司」をコンセプトとしました。パーティの主役になるからには、見て楽しく・食べておいしいのは当たり前ですが、ピンチョスのようなスナック感覚で、食べたいものを選びながら、一口で食べられることが必要だと思いました。一口で食べられることで、家族の会話が弾むシーンをイメージしました。
使用する寿司ネタには、まぐろ・サーモン・海老・いくらなど、お子様から年輩者まで人気のネタを中心に使用し、とにかく見た目で賑やかさが伝わる設計となっています。狭い作業場での製造であることや生ものを扱うため、製造スピードも重視し、スタッフと作業手順の確認等をZ何度も行い当日に臨みました。それでも3人で1時間に10パック製造するのがやっとです。前日の仕込みでは、サーモンやまぐろスライスに切り目を入れ、薔薇を作る際にきれいに花開くようにしています。また、巻寿司だけが大きくならないように酢飯の量も調整したり、酢飯を赤と緑のクリスマスカラーにするなど、実は見えない仕込みが数多くある商品です。
数年前から「お弁当・お惣菜大賞」で評価していただくようになり、一番変わったのはスタッフです。商品も進化しましたが、それ以上にスタッフのやる気はもちろん、技術力や向上心が格段に上がっています。
このような寿司は、やはり見た目が悪いと売れません。上手いスタッフが作った商品と自分の商品を比較し、進んで技術の修練に励むスタッフも増えました。今では自ら生魚をおろして加工するようにもなりました。商品の売上や利益につながることは大事ですが、自らが考えて行動する風土ができてきたことが何よりの成果であり、嬉しく、頼もしくもあります。そして、今後の商品開発や商品提供が楽しみでもあります。
クリスマスパーティ寿司
株式会社ひまわり食品
味燦舞 新潟伊勢丹店 店長
吉田 美砂子