部門別選択
スズキヤの惣菜商品は「安心・安全・おいしい」をモットーに、お客様に喜ばれる商品を目指しています。さらに近年では、地元の食材・旬の食材を使用し、女性のお客様を主なターゲットに商品開発をしています。
今回の受賞商品では、「女性でも手に取りやすい海苔弁当」をコンセプトに、見た目・大きさ・食べやすさを特に重視し、当社西鎌倉店の女性チーフ中戸川さんが中心に考案しました。
SMやCVSで販売される海苔弁当の価格は手頃ですが、男性向けガッツリ系が多く女性は余り買いたいとは思いません。そこで、“(女性の)私が食べたい=女性でも手に取りやすい”海苔弁当を開発することにしました。女性は、色々なおかずを少しずつ、食べやすい一口サイズを好みます。また、一口サイズだと食べる仕草も上品です。そのようなことから、当商品では多数のおかずを一口サイズに加工し詰め合わせました。では「どうして鮭だけ大きいの?」と思われる方も多いかと思いますが、これは当商品を2度楽しんで頂くための工夫です。まずは半分を弁当として、そして残りの半分はお茶漬けとして楽しんで頂けます。鮭を半分残しておいて、お茶漬けの際に一緒に楽しめるように工夫しました。
原材料や具材にもこだわりました。米は岩手県産の当社契約栽培米、海苔は厚みがあり風味も良い兵庫県産海苔、鮭は当社鮮魚部で人気の骨取り鮭、島根県産あご入りの竹輪など、スズキヤで支持の高い商品を多く使用しているのも魅力の一つです。
工程は、昆布茶を混ぜ合わせたご飯に、鰹節、胡麻昆布、揚げ玉、海苔の順に乗せ、その上におかずを乗せていきます。海苔はシート状ではなく、おかず同様一口大に千切りました。竹輪や玉子焼きなども一口大に店内でカットしています。お茶漬けは、何種類ものお茶漬けの素を試しましたが、シンプルな「お吸いもの」が最適でした。お茶漬けで最後にほっこりと幸せな気持ちになって欲しいです。
また、盛付けや容器にもこだわりました。煮物や煮豆など茶色いおかずもありますが、竹輪を磯辺揚げにしたり、玉子焼きや天ぷらなどの黄色をバランスよく配置し、中央に大きな鮭のピンクを配置することで、華やかに見えます。また、丸わっぱが全体を可愛らしく演出し、男らしい海苔弁当のイメージを一切感じさせません。
当商品は手間は掛かりますが、キット化や鮭の加工では部門間連動なども進めており、全社を挙げて訴求していきます。2020年1年間で約4万食を販売する計画です。
鮭と彩り野菜の茶々のり弁
株式会社スズキヤ
SM事業部 商品部
チーフバイヤー(デリカ担当)
木内 美紀(右)
いかりスーパーの米飯や和惣菜をはじめ、こだわりの加工食品等を製造する有楽調理食品㈱では、調理に使用する原材料には一切妥協せず、その時季に一番良い材料と最適な調理法で、手間ひまを惜しまず美味しい商品を製造しています。
今回のコンセプトは、シンプルだけど何度も食べたくなるような“世界一美味しい西京焼の弁当”を作ることです。日本の和食は世界無形文化遺産に登録されるなど、世界中から注目を浴びています。中でも味噌や醤油、だしなどの発酵調味料・発酵食品はその美味しさだけではなく、健康面の効果でも注目されています。最高の素材と最高の西京味噌で、世界中の誰が食べても記憶に残る弁当を目指しました。
原料の銀鱈は、魚体のしっかりとした脂のり抜群のものを使用しました。漬込む白味噌は、いくつもの味噌漬けや味噌を全国から取り寄せ、実際に足を運び、数十種類を試しましたが、中々納得する味噌には辿り着きませんでした。我々は「白味噌と言えば京都」と考えていましたが、答えは京都以外にありました。京都の有名料亭で使用されている味噌漬けの白味噌が、京都以外で製造されており、その白味噌に出会ったことで最高の漬け味噌を作ることができました。漬け味噌は白味噌2種類をブレンドし、酒やみりんを合わせて作ります。これまでの漬け味噌と比べ、旨み成分が非常に高いことと、漬けた素材の風味を活かしつつ味噌の風味と融和し上品に仕上がることが特長です。味噌には最低でも3日間漬け込みます。焼成はスチコンを使用し、通常よりも低温で長めに焼くことでふっくらと仕上がります。最後にバーナーで炙り、香ばしさを纏わせます。
また、今回、当社で人気のアトランティックサーモンの幽庵焼を一緒に入れることで、よりご満足頂けると考えました。
脂のりの良い銀鱈とサーモンに対し、ご飯は食感と健康を考え「もち麦ご飯」を採用しました。おかずには、玉子焼やきんぴらごぼう、胡瓜とわかめの酢の物、紀州南高梅の風味を活かした蓮根、茗荷の酢漬けなど、全て自家製のものを使用。さらに、漬物は茄子と胡瓜の自家製糠漬け、飛騨高山の協力農家が製造する無添加の赤かぶ漬けなど、銀鱈やサーモンがより引き立つように設計してあります。
今後は高齢化に向けた、低糖質や減塩、鉄分が摂れるなど、美味しくて体に優しい商品の開発にも取り組んでいきたいです。
お魚の美味しい西京焼のお弁当
株式会社いかりスーパーマーケット
芦屋店 店長
藤原 英司
商品開発では「美味しい、健康、女性にも優しい、ライフスタイルや食生活に合った商品を提供する」をテーマとして考えています。また、「この商品があるからこの店に来た」とお客様に仰って頂けるような商品を目指しています。
健康というテーマから、最初にイメージしたのは“魚”でした。私が魚好きということもあり、野菜や低カロリー商品ではなく“魚”で商品開発をしました。
当社の弁当・惣菜専門店「デリカキッチン」店舗には、近隣オフィスや商業施設で働く方が多くご来店されます。オフィス等で働く方々の中には食事が偏ってしまう方もいると思われます。そんな方々に、旬の魚でしっかりと栄養を摂って頂けるように作りました。当商品は、健康のためにという目的もありますが、是非、“魚好きの方に食べて頂きたい”商品でもあります。そのため、あえて骨のある魚を使用しています。近年は魚離れが進んでおり、「骨があるから」というのがその理由の一つでもあります。大人に食育はおこがましいですが、魚は骨がある食べ物です。是非、骨を自分で取って食べることも含めて楽しんで頂きたいです。
使用している鯖原料は、ノルウェー産の一番脂ののっている9月・10月に水揚げされたもののみを使用し、切り身の大きさも厳選し照焼きにしました。
鯖はジェットオーブンで焼成しますが、照焼きだれがついているため、通常の焼成方法では表面が焦げてしまいます。温度を下げて焼成するなど試行錯誤しましたが、たどり着いたのは鯖をクッキングシートで覆うことでした。鯖を数枚一組としてクッキングシートで筒状に覆いジェットオーブンで焼成します。ただし、鯖の表面にクッキングシートが触れるとたれが落ちてしまうため、触れないようにするのが重要なポイントです。かなり手間が掛かりますが、この方法が一番美しく焼き上がります。
鯖に使用している照りだれは、鰻メーカーさんが開発した濃口醤油をベースにしたたれです。脂のりの良い魚にも負けず、原料の味わいを引き立ててくれるたれです。
ご飯は福井県産コシヒカリを自社炊飯し、薄口醤油、鰹だし、昆布だし、本みりん、魚醤などで作った少し甘めのたれを混ぜ込んでいます。
今回「管理栄養士監修 『の』の字で食べるお弁当」も入選しており、今後も管理栄養士の資格を活かした商品の開発に注力していきたいです。
大きなとろ鯖照焼弁当
中部フーズ株式会社
デリカ商品開発部 製品課
小栗 好乃
彩裕フーズは、スーパーマーケットマミーマートの惣菜売場商品の製造・販売を行っている企業です。当社では他社にないもの、自社にしかできないものを原料から作ることをモットーとして取り組んでいます。
原料から製造することで、利益の確保はもちろん、従業員の技術レベルの向上にもなり、オリジナリティーのある商品の開発にもつながります。
「浜名湖産生青のりと藻塩のコロッケ」は、マミーマートで定期的に実施される“北海道フェア”などのグルメイベントで人気の惣菜商品が集まる「うまいもの市」向けに開発した商品です。このようなグルメイベントでは、産地を謳ったこだわり商品など、知名度のある仕入れ商品のみで売場が作られ、我々が製造した商品は並ぶことはありません。グルメフェアに並べても引けを取らない商品、メーカーさんが作らない商品を開発することで、新たなチャンスが生まれると考えました。
当商品は、商品名の通り希少な“浜名湖産生青のり”を使用したコロッケです。浜名湖産青のりは通常の青のりと比べ、特有の強い磯の香りと鮮やかな緑色が特長です。このコロッケを作るにあたってイメージしたものは、国民的お菓子でもある“ポテトチップス海苔塩味”です。
多くの国民が袋を開けた時の青のりの香りの感動を覚えていると思います。あの感動をコロッケで表現しました。
じゃがいもは、北海道産男爵を自社工場で蒸し上げたものを、通常よりも粗い15mm角にカットし、ホクホク食感を出しました。ここに重量比で約7%の生青のりを贅沢に混ぜ合わせました。贅沢に使用することで、青のりの風味が容器の外にも漂い、グルメイベントで他の商品にも負けない存在感に仕上がりました。味付けはシンプルに長崎産の藻塩のみです。また、衣は油調後に外から青のりが透けるように薄衣にしました。
大変シンプルで素朴な味わいですが、浜名湖産生青のりの風味とじゃがいもの甘さを贅沢に楽しめる逸品です。
さて、当社では生産性向上の取り組みの中で、共通原料を使用した多品目化を課題として取り上げています。人気商品と同じ原料から全く違う商品を作り出すことで、生産性の向上や利益改善を目指しています。この取り組みは、働き方改革や生産性向上、ロス削減にもつながり、当社だけではなく協力企業にも取り組みの輪を広げ、積極的に進めていきたいです。
浜名湖産生青のりと藻塩のコロッケ
彩裕フーズ株式会社
商品開発室 室長
長澤 裕
伊達物産では、他社ではできない“鶏屋ならではの商品”、また、地元のお客様にいつも支えられていることもあり、食べたときに「親しみやすい、昔懐かしい、元気になるような商品」を心掛けて商品開発を行っています。
当商品は自社で育てているハーブ鶏の新鮮なレバーを使用した商品です。「レバー料理は苦手」「家庭での調理はちょっと…」と言う方にも是非食べて頂きたいメニューです。また、おいしいレバーでありながら、鶏の内臓の需要は正肉に比べると圧倒的に少なく、有効活用の観点からもレバーの商品開発が必要であると考えていました。
原料のハーブ鶏は、オレガノエキスなどのハーブエキスを混ぜた飼料を与えて育て、鶏肉特有の臭みが少なく柔らかいことが特長で、有名ファストフード店でも使用されています。もちろん平飼いで健康的に育った鶏です。自社工場で取り出されたレバーは、流水での洗浄や血抜きなどのしっかりとした下処理を経て店舗に直送されます。鮮度の良い原料を短時間で下処理できることも当社の強みです。
その自慢のレバーを店舗の大鍋を使用し、特製だれで炊いていきます。火を入れすぎると固くなってしまうため、トロ火でじっくりと1時間半炊き上げます。また、形が崩れないように丁寧に手作業でかき混ぜます。特製だれは甘さが先に来て、後からピリリと辛いたれを使用。このたれにはファンも多く「伊達屋の甘だれ(甘辛のたれ)」として、たれだけの販売も実施しています。
美味しくするコツは一晩寝かせることです。一晩寝かせることで、レバー特有のざらつき食感が減り、ねっとりとしたフォアグラの様な濃厚な食感に仕上がります。今流行りの熟成でしょうか。一晩寝かせて美味しくなることは、前回最優秀賞を受賞したおにぎりの具材の伊達鶏を炊いた際に学び、今回に活かしました。また、炊いている時に余りかき混ぜないのも美しく仕上げるコツです。味を染み込ませようとしてかき混ぜがちですが、レバーは崩れやすいので注意が必要です。
今後の目標としては、やはり鶏屋として唐揚げをはじめとした“揚物”で最優秀賞を頂きたいです。当社の素材の良さをシンプルかつ最もポピュラーな形でご提供できるのは揚物だと考えており、そこに独創性も加えた商品を提案していきたいです。
新鮮ハーブ鶏の甘辛うま煮
伊達物産株式会社
代表取締役社長
清水 建志(左)
利恵産業㈱では、弁当をはじめとした米飯類の他、いなり・巻物、和・洋惣菜、サラダ、デザート等、約250アイテムを製造し、主にスーパーマーケットに販売している企業です。
当社の惣菜商品づくりの合言葉は「母の手料理のように」です。いつの時代も思い出すのは母の味です。また、商品開発では、他メーカーやSMが作らないもの・作れないものを世に提案していくことにも注力しています。そのような商品は決して市場のシェアを大きく占めるものではありませんが、「利恵産業は面白い商品を作る」「利恵産業は独創性がある」と評価して頂いております。
今回の商品開発では、スーパーのサラダ売場でポテトサラダやマカロニサラダなどの練り系やマヨ系サラダが多く陳列される中、練り系・マヨ系・白系ではなく、それらと並べても埋もれてしまわないサラダを目指しました。ユニークなネーミングもその対策の1つです。「5種の豆使用」や「5種の豆が入った」としたのではお客様の目に留まりません。
そこで5種の豆をあえて「豆豆豆豆豆」としました。一種のトンチともいえます。お客様が「ん、なんだ!?」「なんて読むんだ?」となってくれれば、シメシメです。
今回使用した“クスクス”は世界最小のパスタとも言われ、海外ではご飯の代わりやサラダ、フランス料理でも“母の手料理のような”料理に使われております。また、カロリーが低く食物繊維が豊富なことから、ヘルシーフードとしても支持されています。開発時期は5月で豆類の旬であったため、そら豆やグリーンピース、レッドキドニー、ガルバンゾ(ひよこ豆)、マローファットピース、大豆と合わせ、食べ応えも彩りも豊かにしました。
味付けは、グリーンピースと相性の良いベーコンを炒め、ベーコンの塩味と旨味にチキンスープを加えて整えました。サラダなので、豆類の味と食感をしっかりと味わって頂くために、シンプルな味付けとなっています。
難しかった点は、全体の水分量の調整です。クスクスはデュラム小麦を粗く砕き蒸したもので、ボソボソの食感となります。日本人がより食べやすくするためには、クスクスの水分量やベーコンと豆を炒めた際の汁の量のバランスが大切です。
今後は、人気が高まるアジア圏のメニューを開発してみたいです。また、定番の和惣菜を見つめなおし、更なる美味しさや値ごろ感の追及も実施していきたいです。
豆豆豆豆豆とクスクスのサラダ
利恵産業株式会社
商品開発部 部長
古川 隆裕
中部フーズ㈱はバローホールディングスのスーパーマーケットバロー全店の惣菜部門を運営しています。「お客様の安全・安心・健康」を第一に捉え、「美味しいお値打ち感のあるおかずを提供する」を使命とし、商品の企画から製造、販売までを一貫して運営しています。その中において、惣菜専門店『デリカキッチン』は「こんなお店があったらいいな、街のお惣菜屋さん」をコンセプトに、スーパーとは違ったメニューや素材、価格帯で店づくりをしている当社の新規ビジネスモデルとして挑戦中の業態です。
当商品の開発コンセプトは“女性が喜ぶサラダ”です。女性は健康のためだけではなく、食シーンを豊かにするためにサラダを好みます。
近年、サラダ類の多くはアウトパック化が進み、差別化が難しくなっています。デリカキッチンではキッチンを完備しており、店内加工のサラダで差別化を図りたいと考えていました。また、2年前からピクルスを開発課題商品としており、ピクルスはランチや夕食の食事の一品としてもお洒落で最適だと考えており、開発に至りました。
デリカキッチンの主なお客様は女性であり弁当の売上構成比が高いため、価格帯は弁当のもう一品として800円前後で収まるように最初に設定しました。
ピクルスの原料は店舗オペレーションを優先するため、原料のカリフラワーをはじめ、白いんげん豆、ダイス野菜(ズッキーニ、赤パプリカ、黄パプリカ、なす)は冷凍野菜を使用。カリフラワーと白いんげんはスチーム調理し、ダイス野菜はそのまま使用します。多品種を少量ずつ使用するので、冷凍野菜はオペレーション的にも便利です。また、酢の浸透も早い利点もあります。これらに店内でスティック状にカットした赤パプリカと黄パプリカを油調し加えます。色合いの良さと食感を残すため、ボイルやスチコン調理ではなく油調が最適です。また、酢と合わせると、味にコクが出て深い味わいとなります。
調味酢は、利尻昆布、焼津産花鰹、柚子果汁などが合わせてあるメーカー仕様のものを採用しました。
容器に野菜と調味酢を入れ、1日寝かせることで、野菜の味や香りが酢にしみ出し、より美味しくなります。
オペレーション負荷の問題もありますが、調理技術や盛り付けセンスなどは店内調理をしないと衰えてしまいます。現場の技術力の向上のためにも、インストア調理商品を提供し続けたいです。
鰹だし香る彩り野菜の和風ピクルス
中部フーズ株式会社
商品開発部 商品課 バイヤー
奥村 真理子
彩裕フーズはスーパーマーケットマミーマートの惣菜売場商品の製造・販売を行っている企業です。当社の麺商品売場の活性化の一環として「うまみ溢れるごぼう天そば」は誕生しました。
当社がマミーマート内で展開する惣菜売場の麺コーナーは、メーカー商品が大半を占めており、自社商品の品揃えは多くありませんでした。
メーカー商品も美味しく素晴らしいのですが、今後益々他社との差別化を図ることが難しくなってきます。この競争時代を勝ち抜いていくためにも、美味しさやオリジナリティで差別化を図っていくことが重要です。
これは各カテゴリーで言えることですが、麺売場での自社商品シェアが低いこともあり、特に注力しています。
当社には「やみつき甘辛ごぼう」という惣菜商品がありますが、原料のごぼうの旨みから大変支持が高い商品となっています。この美味しいごぼう原料を使用して、さらに美味しい商品が出来ないかと考えました。
「やみつき甘辛ごぼう」に使用するごぼうは、比較的近くの工場から使用する分だけが納品されているため鮮度が良く、この鮮度の良さも美味しさの一因といえます。ごぼう原料を焼く、煮るなど試行錯誤した結果、“揚げる”ことでごぼうの旨みをさらに引き出せることが分かりました。
また、カットごぼうの厚さや大きさを変えて調理をし、食味や食感、食べやすさ、食べ応え、見た目など、最適な大きさの短冊切りに行きつきました。ごぼうはバッター液ではなく、軽く打ち粉をし、味付けはせずに揚げます。バッター液を使用すると、レンジアップした際にそばつゆにごぼうの旨みが染みづらくなってしまいます。油調時間も重要で、揚げ過ぎると苦みが出てしまい、揚げな過ぎると旨みが余り染みません。盛り付けは、ごぼうの旨みを堪能して頂くために大盛で盛り付けています。
そばつゆには、カツオをベースにイワシ、アゴ、昆布など、風味豊かなマミーマートグロッサリーコーナーで販売しているPBの出汁パックと同じ配合のものを使用しています。
麺にはケイタリング麺を使用。ケイタリング麺は乾麺で、自社工場で茹でた後すぐに流水と氷で冷やすことで麺の経時劣化が抑制でき、コシのある麺を提供できます。
今後の麺開発では、現在あるインストア商品の焼きそばや焼きうどんなどを自社工場で内製化し、インストア製造商品以上の美味しさに仕上げるとともに、季節ごとに提案できるメニューとして提供していきたいです。
うまみ溢れるごぼう天そば
彩裕フーズ株式会社
商品開発室 担当
高橋 里奈
三善は静岡県掛川市内に1店舗のみで運営している地場スーパーです。商圏には特にDSが多いエリアでもあり、価格で戦っても当然勝ち目はありません。よって、我々は当社ならではの価値を訴求していきます。
当社では地域密着プロジェクトを立ち上げ、若手社員やパート従業員などが参加し、地元を元気にするために地元スーパーとして様々なことに取り組んでいます。プロジェクトでは、スーパーの仕事体験や農業体験、自然派ワインを楽しむ会など、地元生活者と一体の催しを多数開催しています。今回の受賞商品は、そのプロジェクトの一環で掛川西高校との商品開発により誕生しました。地元の学生さんとのコラボ企画という事で自分たちも初めての試みで、お互い試行錯誤しながらなんとか商品化にたどり着きました。
当社が提供する商品は、できる限り保存料や合成着色料などを使用しない安心・安全な商品の提供を心掛けています。また「We Love Local」を合言葉に、地元指定農家農産物をはじめとした地元原料や加工品を多数提供しています。
今回の受賞した「静岡丼」では、「“静岡・掛川産食材×掛川西高”で、地元を活かした商品作り」をコンセプトとし、生徒達とメニューを決めるところからスタートしました。掛川産食材をメインにリストアップする中で、一番インパクトが強い食材が「掛川牛」でした。そして、よりインパクトを出すため“食べ比べ”メニューに決定しました。
ローストビーフに関しては、スチコン調理など試行錯誤しましたが納得のいく状態にはならず苦戦していたところ、地元のローストビーフ専門店がアドバイスをしてくれるなど、地元企業様にも応援して頂けました。
静岡県産米のご飯にはオリーブオイルとフライドガーリックを混ぜ込み、肉との相性も良く食が進みます。ご飯の上には焼津産鰹節でとっただしを使用した錦糸卵を敷き詰め、色合いも考慮しました。また、ローストビーフには静岡県三ヶ日みかんの皮を刻み塩と合わせた「みかん皮ソルト」を、ステーキには味が濃く渋めの掛川深蒸茶を刻んで塩と合わせた「茶葉ソルト」を掛けました。これは高校生のアイデアで、予想以上に風味が良く上質感が出ました。
掛川産の原料はまだまだ探せばあります。今後は生産者が減っている希少な掛川ポークなどを使用した商品も開発してみたいです。
静岡丼
株式会社三善
惣菜部バイヤー
佐藤 剛
高級原料や高級部位で美味しいものができるのは当たり前です。安い原材料から工夫次第で美味しい商品を作ることに意義を見出だし、商品開発に取り組んでいます。また、自分自身がインスタグラムを使用していることもあり、普段の商品開発では女性をターゲットにした“見映え”にも注力した商品を多く開発しています。
当商品は、私の自慢のローストビーフをお客様に気軽に楽しんで頂くために開発しました。ローストビーフ原料はチルドの豪州産牛もも肉の「しきんぼ」という部位を使用しています。多少繊維質ですが、できるだけ安く歩留まり良く加工するため、ブロック肉ではなく丸のしきんぼを仕入れ、自分でサク取りしています。
ローストビーフは、まずフライパンで表面だけを素早く焼き固めた後、芯温を低めに設定しスチコンで焼成。スチコンから出した後、余熱で芯まで熱を入れるところがポイントです。スライスは、ローストビーフの味わいやご飯と一緒に食べた時の食感と歯切れの良さなどを考慮し、1.3mmとしました。
米は新潟県産「こしいぶき」を使用。炊飯時に昆布と一緒に炊き、弁当として一緒に食べた時に、グルタミン酸とイノシン酸の旨みの相乗効果を引き出します。
たれは当店の人気メニュー「たれかつ」のたれをベースに使用しています。「たれかつ」のたれは、12、3年継ぎ足し使用している秘伝のタレで、新潟の醤油「越のむらさき」やそばつゆ、砂糖などを加えた甘めのたれです。当商品ではこの秘伝のたれをベースに、みじん切りオニオンや酢などを加えています。たれはローストビーフに直接掛けるのではなく、うな重のようにご飯にかけます。さらにそのご飯上に卵黄とマスタード、なたね油等を配合した卵黄ソースを掛けることで、さらに濃厚な味わいと満足感が得られます。最期にワサビをトッピングして完成です。
容器は誰もが???となるフードパックを採用。これは“中身を重視”したことを伝える演出です。当初からワンコインで提供することを計画しており、1円でも原材料に掛けたいという思いがありました。周りからは「みすぼらしい」「安っぽい」などの批判的な意見が多くありましたが、あえてフードパックを使い「容器ではなく中身を見て欲しい」という強い思いを全面に出しました。
お客様からは「旨いのにこんなに安くていいの?」「ローストビーフ弁当をこの価格で食べられるのは驚き」など、好評価を頂き、作戦は大成功でした。
さくたろう元祖ローストビーフ弁当
有限会社北弁
レストラン主任
廣岡 信太郎
藤三は広島県呉市を拠点とする地域密着型スーパーマーケットです。藤三の惣菜作りでは、毎日でも食べられる飽きのこない味付けを心掛けており、薄味でもまた食べたくなる商品作りを目指しています。また、地元グルメが少ないことから、地元グルメになるような話題性のある商品や地産地消の商品開発に取り込んでいます。
当社では地域密着の取り組みの一環として、2019年から地元の呉商業高校商品開発チームとの共同開発を開始しました。共同開発の仕組みは、開発チームから自由にアイデアを出して頂き、我々が形にしていく形式です。開発チームメンバーからのアイデアは、地元食材を使用したものが多く、地元愛を感じました。名物グルメや名物商品が少ない呉市ですが、アイデアには斬新なものが多く、我々では思いつかない組み合わせも多く、大変勉強になりました。
当商品に使用される「がんす」と「いかの姿フライ」は呉市発祥の商品です。「がんす」は白身魚のすり身に玉ねぎや七味唐辛子等を加えてパン粉を着けて揚げたもので、地元の㈱三宅水産が開発しました。
「いかの姿フライ」も地元の㈱スグル食品が開発し、おつまみやスナック、お好み焼きの具材として人気の商品です。どちらも呉市民にとってはソウルフード的存在で、無くてはならない存在です。
がんすはスチコンでカリッと焼き上げ、約1.5センチ四方に切り、醤油ベースの茶飯の中央に配置します。その上にがんすの約3倍ほどのマヨネーズを乗せて包みます。がんすの大きさとマヨネーズの量のバランスは試行錯誤しましたが、各食味を一番活かせる大きさに辿りつきました。茶飯には㈱アサムラサキ「広島県産牡蠣使用のかき醤油」と青さ粉、胡麻油、そして砕いたいかの姿フライを混ぜ合わせてあります。いかの姿フライが良いアクセントとなり、新食感のおむすびとなりました。
最後に、おむすびに海苔を付けました。全体に海苔を巻くよりも手間となりますが、この一手間で可愛らしくなり、価値向上に繋がると考えています。
今回の共同開発では、「安芸津の赤じゃが」と地元の㈱ますやみその味噌を使用したものも商品化予定です。高校生の斬新なアイデアと当社の開発力で、まずはB級グルメから、そして呉・広島の名物グルメに育てて行きたいです。
がんすマヨネーズおむすび(いか姿フライ入り)
株式会社藤三
センター商品部 課長
高田 章生
オクモトは米卸業をベースに、おいしく安全な「お米づくり」を広島県の農業を通じて実現する企業です。今回受賞した「海賊むすびセット」は、当社が“お米の美味しさを直接伝える”取り組みの一環として展開するおむすび専門店「おむすび膳七」で開発・販売しました。
「海賊むすびセット」は、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約60kmの「瀬戸内しまなみ海道」をPRするプロジェクトの一環として誕生。観光資源の少ない尾道において、「海賊むすび」がしまなみ海道名物になって欲しいという思いを込めて開発しました。
「海賊むすび」には、①三角形(山形)②三種の具材③作り手・食べ手・地域も幸せになる“三方よし”、の“三”をベースとしたルールがあります。このルールをベースに、戦国時代に瀬戸内海の潮流を支配した「村上水軍(村上海賊)」が海上で食したであろう“むすび”をイメージして作りました。
「海賊むすびセット」は「尾道ラーメンむすび」「瀬戸内レモンむすび」「ひじきと紅鮭むすび」の三種構成です。「尾道ラーメンむすび」は、ご当地ラーメンの尾道ラーメンをおむすびで表現。瀬戸内産いりこだしと醤油ベースのスープに豚の背脂を加えた濃縮ラーメンスープをご飯に混ぜ込み、具材にはチャーシューと青ねぎを使用。炊込みでは背脂が強くご飯が成形できないため混ぜ込みにしました。「瀬戸内レモンむすび」は、広島菜と音戸ちりめんのふりかけに加え、広島名物「イカ天」の「イカ天瀬戸内レモン味」を砕いて一緒に混ぜ込みむすびました。瀬戸内レモンの酸味とイカ天のサクサク感が斬新なおむすびを提供します。「ひじきと紅鮭むすび」は、塩ひじきをご飯に混ぜ込み、膳七一番人気の「紅鮭むすび」の紅鮭を中具として使用しました。
おむすびの基本原料“米・塩・海苔”は瀬戸内産にこだわりました。お米は広島県世羅郡世羅町産のこしひかりを使用し、炊飯時にアルカリイオン水を使用することで美味しく炊き上がります。塩は広島県呉市蒲刈町産の藻塩を使用。海苔は広島県福山市内海町産の「EM元気海苔」の初摘み海苔を使用。「EM元気海苔」はEM(有用微生物群)の力を借りて、塩素処理を行わずに製造されています。
おむすびは気軽に食べられるファストフードです。今後は、女性向けおむすびや健康系おむすびなど、機能や目的を持たせたおむすびを開発していきたいです。
海賊むすびセット
株式会社オクモト
管理栄養士
村上 有規子
関西スーパーでは、お客様が普段繰り返しご利用いただける惣菜、健康を気にされているお客様にも優しい惣菜を目指しています。また、当社では新たな取組みとして、寿司・惣菜・ベーカリーだけでなく、当社のお肉・お魚・お野菜など生鮮素材を使用したお肉惣菜・お魚惣菜をまとめた「デリカステーション」を設置し、関西スーパーの生鮮・惣菜の良さを訴求しています。
「瀬戸内産天然真鯛の漬け丼」は、鮮度の良さを追求した商品です。宇和島の鯛めしにヒントを得て、3月~4月末までの桜鯛(真鯛)が旬の時期に提案しました。ただし、桜鯛は高価な原料であるため、当商品にはチダイを採用しました。チダイの刺身の食味・食感は真鯛に似ており、真鯛に勝るとも劣らない鯛です。また、1年中獲れることで一般にも親しまれており、価格も真鯛と比べ大変リーズナブルです。
チダイは、天然鯛の漁場がある瀬戸内産のものを使用しています。水揚げ後に、近隣の加工場ですぐに刺身に加工された高鮮度素材です。もちろん加工する時のチダイは活魚の状態で、鮮度が抜群な状態で加工されます。刺身にしたチダイは、薄口醤油をベースに鰹だしや昆布だし、砂糖、みりんなどを配合したタレに30分ほど漬けます。天然素材ならではの風味とその美味しさを楽しんで頂けるように、あえて甘すぎない薄味に仕上げました。タレに漬けた刺身は真空パックで冷凍され店舗作業場に運ばれます。店舗で漬けるのではなく水揚げ後すぐに漬けることで、関西人の好きな「プリッ」とした食感を残せ、味ムラもなく仕上がりました。なお、1食分の刺身は約35gあり、しっかりと楽しんで頂ける量となっています。
盛り付けは“宝石箱”の様に仕上げるように心掛けました。酢飯の上に錦糸卵を敷き詰め、その上に漬けた刺身を乗せます。彩りとして、とびの子やいくら、かいわれ大根などを添えました。なお、当商品はオペレーション面でも効率よく設計してあり、通常の海鮮丼と比べ約半分のオペレーションで仕上がり、生産性も高い商品といえます。
今後の開発としては、定番商品のリニューアルと生鮮各部門とのコラボ商品の開発を加速させていきたいと思います。特に定番商品に関しては、惣菜部門の顔とも言える大切な商品にもかかわらずリニューアル速度が遅いといえます。美味しさを追求する上でもリニューアルをしっかりと実施していきたいです。
瀬戸内産天然鯛の漬け丼
株式会社関西スーパーマーケット
営業本部 第2商品グループ
惣菜チーム チームリーダー
富田 浩次
塩荘は創業明治36年から駅弁を製造・販売し、現在では駅弁の他、外食事業も展開しています。
駅弁商品は地場でとれる美味しいものを中心に地産地消の考え方で開発しています。鯛寿司に関しては、当時の敦賀市が若狭湾の東に位置し港町として栄えており、当社三代目の時代に「地場名産品を作りたい。特徴ある商品を開発したい。」という思いから、日本海の魚を使用した寿司を作ることとなりました。
当初は若狭湾や敦賀湾で獲れるキスを使用した押し寿司を製造・販売していましたが、キスは主に夏場に獲れる魚であり、年間を通して地元で獲れる「蓮子鯛」を使用した商品づくりに取り掛かりました。当初から蓮子鯛の笹漬(酢漬)などは地元の名物商品としても人気となっており、蓮子鯛を使用した押し寿司の駅弁が出来上がりました。
現在は昔と異なり蓮子鯛の漁獲高も減り原料確保に苦慮しますが、若狭湾近海を中心に日本海で獲れる原料にこだわっています。水揚げされるとすぐに協力企業で三枚におろされ、一塩したチルドの状態で当社工場に届き酢〆されます。
酢〆は、漬け酢と時間がポイントであり企業秘密でもあります。長時間酢〆すると身が崩れ食感が損なわれてしまい、風味も損なわれるため、酢〆時間は数分のみとなります。
使用する酢ですが、開発した当初は小浜市の専門業者が製造した米酢を使用していましたが、現在は協力会社のもと時代に合った酢を使用。酢にはざら目を加えほのかに甘く、上品で奥深い味わいに仕上げてあります。なお、蓮子鯛の酢〆と酢飯にも同様の酢を使用しています。
押し寿司の米は福井県産「華越前」と「コシヒカリ」のブレンド米を使用し、当社の地下数百メートルから汲み上げた地下水で炊飯しています。
一般的に押し寿司は固く締まったものが多いですが、駅弁として食べやすくするために余り圧力はかけずに製造し、鯛も酢飯も食べやすい固さに加工してあります。この圧力加減も重要なポイントと言えます。
味付けは、基本的に酢と塩のみで、醤油を使用せずにそのままでも美味しく食べられるように設計しています。
また、弁当箱は地元名産の蓮子鯛の笹漬の樽を製造している職人さんが手作りしたものです。
現在、「越前かに」の足身をほぐさずに酢〆して並べた贅沢な押し寿司や地元で養殖している「ふくいサーモン」を使用した押し寿司なども開発し、人気商品となっています。今後も駅弁で地元を応援していきたいです。
鯛の舞
株式会社塩荘
常務取締役
岩橋礼子(左)
成城石井は、おいしい、こだわった、安心・安全な食品を、世界中、日本中を歩き回り発掘、開発しています。また、当社の自家製惣菜やスイーツを製造するセントラルキッチン(CK)では、自社輸入をはじめとしたこだわりの原材料を使用した美味しい商品をお求めやすい価格で提供できるように心掛けています。自家製のスイーツ作りでは、“当たりまえのことを当たり前にやること”をモットーに、原材料などは加工品を使用するのではなく極力手づくりの工程で製造し、自分の家族にも安心しておいしく食べられる商品作りを方針としています。また、特に洋菓子作りでは濃厚な味わいにこだわり、一口食べた時の満足感を提供できることを重視しています。そして、そのような味わいを成城石井のスイーツの味としてお客様に受け入れていただいていると感じています。
当商品は、自社輸入のクロワッサンとクーベルチュールチョコレート、そして人気商品「生プレミアムチーズケーキ」の生地が三位一体となった商品です。「夏場に冷やして食べるパン」へのお客様の期待の高まりを感じていたことや、夏場にパンの売上がおちることもあり、その解決策として開発しました。さらに、現在使用している原材料で最高の商品を作れないか考えた結果、成城石井で大人気の「生プレミアムチーズケーキ」の生地とパンとの組み合わせに思い至りました。なお、「生プレミアムチーズケーキ」は、1日に2,500~3,000個出荷する、成城石井自家製カップスイーツの1番人気商品です。
クロワッサンは、フランスから自社輸入した生地をCKで焼成。16層に重なった生地には、風味が良く味わい深いフランス産発酵バターを使用しています。「生プレミアムチーズケーキ」の生地は、舌触りの滑らかなクリームチーズ、北海道産の牛乳を使用した自家製カスタードクリーム、そして風味豊かなカリフォルニア産レーズンやアーモンドスライスを合わせた濃厚な甘さが特長です。その生地をクロワッサンに挟み込み、溶かしたハイカカオクーベルチュールチョコレートをクロワッサンにコーティングしました。最後に、ビターチョコレートとも相性の良い、アーモンドプードル・バター・グラニュー糖・小麦粉等で作った風味豊かなシュトロイゼルを散らしました。
今後はパンに進化の可能性が大きくあると考えています。菓子職人であるからこそできるパン、パンとスイーツの融合など、パンのカテゴリーを進化させていきたいです。
ハイカカオクーベルチュールの
生プレミアムチーズクロワッサン
株式会社成城石井
製造本部 製造部 菓子グループ長
光野 正三
ルビーチョコレートとは、ルビーカカオ豆からとれる、フルーティーでベリーのような風味とピンク色が特長の希少価値の高いチョコレートです。本商品は、このルビーチョコレートを原材料として使用しました。
ルビーチョコレートを使用したデザートの開発は、当社としても、私自身としても初となり、新たな挑戦でした。可愛らしいピンク色やフルーティーな香りなど、ルビーチョコレートを最大限に感じて楽しめる商品にしたいという思いのもと開発に着手。パンナコッタかムースの2択で悩みましたが、チョコレートを使用したパンナコッタは珍しいことや、ルビーチョコレートの色と風味、濃厚さを伝えるのには滑らかな食感が最適であることからパンナコッタを採用しました。また、トッピングにもルビーチョコレートと相性の良い味わいの具材を組み合わせ、そのおいしさを満喫できるような逸品に仕上げました。
苦労した点は、パンナコッタ生地を作る際のルビーチョコレートの取り扱いです。ルビーチョコレートは生クリームや牛乳などを混ぜると茶色く変色しやすいため、注意が必要です。そこで、相性の良いフランボワーズ(ラズベリー)ピューレを加えることで変色を防ぎつつ、ルビーチョコレートそのものの風味をより高めた上品な味わいに仕上げました。なお、パンナコッタに使用するルビーチョコレートは自社輸入のものを、生クリームや牛乳は国産のものを使用しています。
トッピングは、パンナコッタとの相性はもちろんのこと華やかな見映えも意識しました。パンナコッタの上にホイップクリームとフランボワーズのナパージュ、さらに、ルビーチョコレートを絡めたカリフォルニア産クルミやドライクランベリー、砕いたピスタチオをトッピング。見映えと共に異なる食感の楽しさを表現しました。そして、最後にルビーチョコレートのクーベルチュールチョコレートのタブレットを乗せ、ルビーチョコレートそのものの味わいも楽しんで頂けます。
今後もルビーチョコレートを使用した商品開発を進めていきたいと考えています。2020年はオリンピックイヤーでもあることからあり、ルビーチョコレートに限らず和洋折衷の“和スイーツ”などの提案もしてみたいです。
ルビーチョコレートと2種ベリーのパンナコッタ
株式会社成城石井
製造本部 製造部 菓子グループ主任
原島 利明
秋田県大館市に本社を置き、スーパーマーケット「いとく」を、秋田県に22店舗、青森県に5店舗展開しています。
デリカの商品作りの考え方は3つあります。1つは地域性を大事にすることです。といっても、エリアによって食習慣もし好も異なるので、デリカセンターで製造する商品は、地域の食材や調味料を取り入れつつ、デリカセンターのある秋田県県北の味を基本にしています。2つ目は、安心、安全、健康を意識することです。健康面では、東北は減塩が必要ですが、減塩を押し出すと反応が悪いので、さり気なく減塩にしたり、野菜を多くして揚げ物を減らすといった工夫をしています。
3つ目は、おいしさと価値提案です。おいしさを追求した上で、食材の産地や銘柄、特徴など、価値をしっかり伝えるようにしています。
今回受賞した「お彼岸セット」は、2017年の秋に販売したのが最初です。発想のもとになったのは、青森県津軽地方で、お盆のお墓参りの時にご先祖さまにお供えする折り詰めの「法界折(ほうかいおり)」です。家で作る方が減って、店舗での需要が高まり、近年は、秋田県北部にも浸透していました。
お彼岸の際も、手軽にお供えできる折り詰めがあれば、お客さまのお役に立てるのではと「お彼岸セット」を開発しました。
お彼岸のときには、赤飯、おはぎ、野菜と山菜の煮染め、盆菓子が売れます。これらを詰め合わせ、餅菓子は、秋は芋大福、春は桜のくず餅を入れて季節感を出し、おはぎは、春は「ぼたもち」と呼ぶので、秋は「お彼岸セット(萩)」、春は「お彼岸セット(牡丹)」というラベルを貼り、価格は本体価格でワンコインにしました。
工夫した点は2点。1つは見栄えで、彩と全体の配置を考えて、目を引くようにしました。もう1点は日持ちです。店舗の営業時間前にお墓参りをして、仕事に行く方もいらっしゃるので、前日に購入できるよう消費期限を店舗に届いてからプラス1日とし、煮物などは濃い目の味付けにして、冷蔵販売にしています。
今後の開発テーマとしては、地域により密着した商品開発です。秋田県・青森県にはおいしい食品素材が沢山あります。おなじみの食材でも新たな食べ方を発信し、お客さまの食卓をより楽しいものにしていきたいと思います。
お彼岸セット
株式会社伊徳
デリカセンター 商品開発マネジャー
長岐 健志